2012年9月8日土曜日

はじめに

今回の企画書の最初のページに書いた、今回の企画に対する自分の考えです。

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企画「Seed」と行田の文化振興について
野本翔平

 はじめまして。本企画の発案者であり、制作事務を担当している野本です。このような企画を私の生まれ故郷である行田で行えることを、私は大変嬉しく思っています。
 私は5年ほど前から、地元・行田における文化振興に興味を持ち、多くの方々と恊働しながらそれに取り組んできました。多種多様な文化がある中で、私は特に芸術・美術を軸とした文化の振興に力を注いできました。主な事例としては、忍地区にある牧禎舎での現代美術展の開催(2012年~)、本町のパン屋さん「翠玉堂」での月一回のアートイベントの開催(2009年~)、埼玉県立近代美術館が主宰する県内美術関係者のネットワーク形成事業SMF-SaitamaMuseForumへの参加(2009年~)などの活動を行なってきました。また最近は行田の市政により積極的に関わっていくために、平成23年度行田市議会議員選挙への立候補(次点で落選)、市議会の傍聴なども行なっています。
 今回の企画は、今年の初めに行田進修館高校3年生の大場恒星さんと知り合ったことから始まりました。彼と話をするなかで、彼が演劇部に所属し、演劇やバンドの活動をしていることや、作品発表の機会は年に2回しかないことなどを知り、私は彼らの演劇作品の公演を、ぜひ彼らの地元であるここ行田で開催したいと考えました。
 行田には大きなホールや文化会館はあっても、小規模の公演を気軽に行えるような場所はなく、地元の若者による実験的な演劇・映画・音楽・詩・ファッションなどの公演や上演やイベントは私が知る限りでは全く行なわれてきませんでした。そのことが現在の行田の文化的な弱体化、さらには経済的な衰退、その結果としての行田市民の生活の質的な貧困化に強く起因していると私は考えています。文化というものは政治経済と切っても切れないものであり、文化財と呼ばれる品々は政治経済なくしてはそもそも存在することも出来ません。逆もまた然りであり、文化的豊かさのないところでは画期的な政策立案もされず政治経済は停滞し、住民の生活には貧しさと虚しさが付きまといます。文化も政治も経済も、それらは要するに私たちの生活です。私たちは私たちの生活を私たち自身の手で作り、育てていく必要があります。したがって、どんなささいな活動であれ、地元の若者が主体的に行なっている活動には、注目し、もし賛同できる内容であるならそれを支援し、育てていくのが地元の大人の役目だと私は考えます。そういった考えから私は、地元の大人の一人として、彼ら地元の若者たちが演劇公演を行う機会を行田で作り出したいと思いました。また、育てる、という観点から、公演だけでなく、東京から講師を招き、稽古を兼ねたワークショップも行なうことにしました。
 今回会場として使用させていただく場所は牧禎舎です。ここは昭和15年創業の足袋・被服商「牧禎商店」の染色工場だった建物で、商店の閉鎖後も残っていた建物を、数年前からNPOぎょうだ足袋蔵ネットワークが借り受け、修繕・管理をしています。当時の機械等はすべて撤去されていますが、その他はほとんど当時のままで、その内装や外観は現在の一般的な建築物とは一線を画し、長い時間と多くの人々の記憶の堆積を感じさせます。行田の歴史的な建物と、行田に新たに生まれ育った若者たちによる、今昔混合の共同創作を通じて、これまでにない画期的な文化振興の取り組みを目指します。
 また、本企画は今回だけで終わらずに今後も継続的・発展的に行なっていくことを念頭に計画しています。地域密着型の若者主体の活動がとかくお祭り的なイベントで終わってしまうことが多いのはもはや周知のことであり、同じ轍を踏まないためには長期的な視点を持って継続して行なっていくことが必要です。第一回目である今回は、私が東京で一緒に活動するアーティストグループ、bug-depayseのメンバーであり演出家の宗方勝氏に講師を務めていただき、ワークショップと公演を行いますが、今後は演出家に限定せずに、より広くダンサーや音楽家や美術家なども講師として招き、行田の若者たちと共に、さらに創造性豊かな共同創作を行っていこうと考えています。今回の企画が、行田の未来を創る小さくとも意義のある一歩になれるよう、関係者一同、精一杯頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。

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